
整形外科
整形外科
整形外科は、運動器を構成するすべての組織(骨、軟骨、筋、靭帯、脊髄、神経など)の疾患や外傷を治療する診療科です。骨折や脱臼、捻挫など怪我によるトラブルや、加齢・変性による変形性関節症、頚椎・腰椎など痛みで日常生活が損なわれる疾患はもとより、内分泌のトラブルによる骨粗鬆症や免疫のトラブルであるリウマチなどの膠原病(自己免疫疾患)、痛風や感染症などの炎症を主体とする疾患、腫瘍・先天性疾患・側弯症やペルテス病などの小児疾患まで、多岐にわたります。それらの疾患は密接にリンクしており、「老化現象」と思っていたら全くの別疾患であったということもしばしばで、やはり「きちんとした診断をつける」ことが全ての始まりです。
当院では、小さなお子さまからご高齢の方まで、すべての年齢層の患者さまを責任を持って診察いたします。身体のどこかが痛い、事故でけがをした、しびれや痛みで手足が思うように動かせないといった症状や運動器についてのお悩みや困り事がありましたら、何でもお気軽にご相談ください。
四肢の骨折や脱臼、捻挫もその病態に応じた治療が望まれます。また、年齢により治療の方法も変わります。一般に小児の怪我は軟骨成分が多い関節構造の特徴からレントゲン画像に投影されない損傷が多く、超音波(エコー)機器でなければ診断が確定出来ないこともあります。成人の捻挫でもエコー検査で損傷靱帯を確認し、必要な治療を組み立てることが望まれます。エコー検査でスクリーニングのうえ損傷の程度が大きければMRI検査を必要とすることもあり、外部委託検査になりますが複数施設と提携しており随時精密検査を行います。当クリニックは関節鏡(関節の内視鏡手術)を常時施行できる環境にありますので、手術が必要な状態であれば日帰り手術の提案も可能です。
頸の痛み、肩こり、腕の痺れ、脱力、手の痺れといった症状は頸椎のトラブルから生じることが多い症状です。頸椎は7つの骨から構成されますが、それぞれ6面の関節軟骨面を持ち、ひとつひとつリンクしながら稼働するため、関節の動きが悪くなると痛みが生じたり、神経を刺激して「痺れ痛い」といった症状が出たりします。頸椎腰椎など脊椎疾患は男性に多く、なかには靱帯骨化症といった遺伝的要素を背景とした特殊な状態であることもしばしばです。頸椎牽引は頸椎から枝分かれした神経の絞扼(しめつけ)を回避する重要な治療となり、病期が早ければ牽引だけで症状が回復することもよく経験します。内服は炎症を取る「抗炎症薬」だけでなく、痛みを感じにくくするタイプの内服薬も広く使われるようになり、日常生活を損なう痛みから早期に抜け出すことを目指す治療も可能となっています。また、難治性の神経症状に対しては点滴や各種神経ブロック注射を行います。運動神経麻痺が生じている場合はMRI検査を行い手術が必要な状態かを判断していきます。
腰の痛み、下肢の痺れや痛み、夜間の足の攣り、休み休みでなければ歩けない、立っていると下肢が重くなる、など症状は多岐にわたります。御高齢の方は「下肢は痛いけど腰は痛くない」という場合が多いのですが、腰部脊柱管狭窄症は「腰痛が無い」のが特徴です。
腰椎と腰椎をつなぐ椎間板軟骨は、外枠はゴムタイヤのような靱帯の枠(線維輪)で、その内部にナタデココのような柔らかいクッション材(髄核)が含まれています。若い方は椎間板軟骨も瑞々しいので、破裂した際は激烈な痛みで身動きがとれなくなります(ぎっくり腰)。年齢が上がると椎間板軟骨は水分が減り、固く締まった軟骨になり安定していきます。
椎間板軟骨そのもののトラブル時はコルセットや安静で椎間板周囲の組織が安定するのを待ちますが、高齢の場合は積極的にリハビリ介入を行います。低周波で阻血に陥った背中の筋肉の循環を再構築し、理学療法士のストレッチや体幹筋トレでバランスを取り、牽引で坐骨神経の浮腫を取っていきます。消炎鎮痛剤や血管拡張薬の内服が奏功しなければ点滴や仙骨ブロック、腰部硬膜外ブロック、神経根ブロックなど各種の注射治療を行い、神経の痛みや腰痛の改善に努めます。それでも治らない場合は手術で背骨の一部を削り神経の圧迫を取ることを考えていきます。腰痛の原因が「背骨のガタつき」による場合は注意が必要です。
変形性関節症の原因は多岐にわたり、関節面の骨折や軟骨損傷、半月板や関節唇など関節内構造体の損傷や緩み、靱帯断裂など軽重含め外傷によるものと、関節炎を惹起させるリウマチ類縁疾患によるものと大きく分けられます。まずはその原因が構造的なトラブルに起因しているものなのか、遺伝的なトラブルを背景とした免疫システムの不具合から生じた関節炎なのかを把握する必要があります。レントゲン検査である程度判別できますが、必要に応じて採血を行い、加齢変化なのか、関節炎疾患なのかを鑑別します。関節潤滑を担うヒアルロン酸は分子が大きいためコンドロイチン等の軟骨や関節液の構成成分を内服しても、そのままの形で腸の粘膜を通過することは無く、直接的に軟骨を増やす効果は見込めません。関節炎の状態が長引くと、その状態が関節潤滑を著しく損なわせるため、治療のメインは「関節炎のコントロール」です。痛み止めは「痛みを感じにくくする」ために処方されるのではなく、関節炎の改善のために処方されます。内服で太刀打ちできない状況であればヒアルロン酸の関節内注射を行います。当クリニックでは再生医療を3種類準備しておりますが、リウマチや半月板断裂などの原因疾患がおざなりになっていては効果も半減しますので、まずはしっかりとした診断が大切です。
リウマチは女性に多く発症する疾患で、初期には関節の痛み、腫れが複数箇所に発生し、それが数日続くことで気付かれます。朝の手のこわばりというキーワードはリウマチの初期症状として広く認知されてきました。リウマチは遺伝的要素を背景とした疾患ですが、血縁にリウマチの方がいないリウマチ症例も多く発見されるようになりました。リウマチは特に診断が難しい病気で「あなたはリウマチではない」と言われていいた方が数ヶ月後リウマチとして診断されることも多く経験します。古典的なリウマチは関節が激しく破壊され、人工関節置換術を繰り返し、といったイメージがあるかもしれませんが、1999年に国内でリウマトレックス(メソトレキセート)が発売になったことで世の中が大きく変わりました。1993年頃にサラゾピリンが使われ始め1995年頃に欧州でメソトレキセートがリウマチに有効らしいという論文が発表された時のインパクトは今でも記憶しております。それまでは戦車に竹やりで突っ込んでいた感覚の治療が、十分に対抗できる治療の手立てを得たことは本当に喜ばしく、隔世の感があります。現代では古典的なリウマチと分けて、初期症例を「関節炎疾患」として対応することも増え、早期診断・早期治療介入が重要になっています。
日本は国土にカルシウムがあまり多く含まれておらず、世界的に見てもカルシウム摂取量が極端に少ない国です。例えば、ヨーロッパの市場で売っているレタスと日本のレタスのカルシウム含有量を比べるとおよそ5倍の差があります。欧州は地面を掘ると貝殻が出てきますが日本は火山の国なので粘土質の土壌ということが大きく影響しています(硬水と軟水の違いと考えてもよいですね)。骨はカルシウムとリンが1対1の割合でタンパク質という肉の塊に飛び込んで構成されるので、タンパク質の摂取も大切です(リンはお米にたくさん含まれているので安心です)。そして、女性ホルモンが「骨の中にカルシウムを閉じ込めておく」役割を持ちますので、女性の場合は閉経後に急速に骨が減り骨粗鬆症に向かいます。当クリニックではDEXA法という大型の骨塩定量機器を導入しており、病院クラスと同精度の検査が可能です(前職の病院と同じ機種を導入しています)。また、骨粗鬆症は骨代謝のどこが障害されているかで治療の内容が変わります。骨代謝採血をもとに骨形成促進が必要なのか骨破壊抑制が必要なのか、ホルモン異常が原因なのかを精査し、選択的な投薬を行うことで治療効果を最大化していきます。また、骨は刺激しなければ弱くなる一方ですので、積極的なリハビリテーションで骨代謝を促します。
繰り返しの動作から生じるスポーツ障害は、その原因が多岐にわたり、それらを的確に診断することが重要です。その人の生まれ持った関節が緩いのか固いのかにより対応が異なります。野球の場合は投球障害が主となりますが、固い関節の場合は非投球側の股関節の可動域を拡大する必要があります。膝の靭帯損傷では、怪我の回避動作が出来ていないと治療後も再受傷することになりますので、これらの啓蒙も大切です。「メスを入れると選手生命が終わる」と言われた時代は過去となり、現代では低侵襲手術である関節鏡視下手術の普及により多くの競技者が肩・肘・手関節・母指・膝・足関節などの関節鏡視下手術を受けるようになりました。当クリニックは関節鏡クリニックですので、これらの治療を積極的に提案できる環境にあります。肩は腱板断裂・SLAP損傷・肩鎖関節脱臼、肘は難治性テニス肘、手関節はTFCC損傷、母指はCM関節症、膝は半月板縫合、靭帯修復・再建、足関節は遊離体摘出や靱帯再建など多くの疾患に対応します。
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