
リハビリテーション
リハビリテーション
国民病ともいわれる腰痛・肩こりは脊椎の変性(加齢変化)が主因となることが多いものですが、諦めてはいけません。手の痺れや下肢の痺れ、痛みは脊椎(頚椎・腰椎)から四肢に伸びた神経の枝が、脊椎の骨棘(こつきょく=骨のとげ)や飛び出した椎間板軟骨で絞扼され、神経そのものが浮腫んで腫れた状態になると生じます。その状態は「神経炎」とも言えますが、医師の処方した薬が現場に届かなければ回復に時間がかかります。頸椎牽引や腰椎牽引は牽引している間だけでも神経の枝に対する圧迫を取り、神経そのものの循環の改善・血流回復・神経自身の酸欠の改善・処方薬のdeliveryで神経そのものの炎症を回復させる目的があります。軽い痺れであれば牽引だけで回復した経験をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。当クリニックでは頸椎腰椎各神経のブロック注射(神経の腫れを取る手技)が可能ですので、内服薬だけでなく、それらブロック注射や点滴と牽引、理学療法士のストレッチや低周波治療による疼痛筋肉へのアプローチなど、集中的な治療介入をすることで症状の早期改善を目指しています。
変形性関節症の原因は多岐にわたり、関節面の骨折や軟骨損傷、半月板や関節唇など関節内構造体の損傷や緩み、靱帯断裂など軽重含め外傷によるものと、関節炎を惹起させるリウマチ類縁疾患によるものと大きく分けられます。下肢のアライメント(O脚や側弯など脊椎のゆがみ、隣接関節のトラブル)を整え、歩行時のバランスを再構築することも重要な要素です。固くなった関節の周囲の筋肉は痩せていき支持脚としての機能が落ちていきますので、どこかでその悪循環を断ち切らなければなりません。筋肉に対する電気刺激など物療を組み合わせたプログラムを実施していきます。
中年以降、特に50代に多くみられ、糖代謝異常の関連が取り沙汰されています。肩関節を構成する関節包靭帯や腱板(肩甲骨と上腕骨をつなぐ板状の腱)などのトラブルで、肩関節の可動に大きく関わる「腱板疎部」の拘縮(固くなること)が主因のことが多く、周囲に影響が波及すると肩甲骨自体の動きも悪くなり、複合的な原因で関節可動性が低下していきます。腱板疎部の動きが自然回復し時間経過で治癒することもありますが、長期化すると「難治性五十肩」となり、鏡視下手術の頁で紹介する肩関節鏡視下関節解離術の適応となります。
当クリニックでは難治性五十肩に移行することを極力回避すべく、肩甲骨と上腕骨の間の関節(肩甲上腕関節)だけでなく体幹と肩甲骨のスライド、肩甲胸郭関節の可動域を拡大し日常生活動作の改善に取り組んでいます。関節内注射と理学療法士による特殊プログラムを実施し、早期から治療介入することで成績向上に努めています。
競技者としてのパフォーマンス向上と競技人生をできるだけ長くするという目標に向かって、それぞれの競技特性に対するアプローチを行います。繰り返しの動作で発生するテニス肘やゴルフ肘、肩腱板損傷、SLAP損傷には除痛のみならず可動性の再獲得、再発や再受傷を回避する回避動作や必要なストレッチが重要です。投球障害肩は非投球側の股関節の可動域低下が主因であることも多く、そのパーツにとらわれない全身の関節運動の再確認とバランストレーニングが必要です。肩腱板断裂、アキレス腱断裂、膝前十字靭帯断裂などの靭帯断裂は当クリニックで日帰り手術の対象ですが、再断裂を回避する動作訓練やストレッチも重要なプログラムです。
リウマチは女性に多く発症する疾患で、初期には関節の痛み、腫れが複数箇所に発生し、それが数日間続くことで気付かれます。朝の手のこわばりというキーワードはリウマチの初期症状として広く認知されてきました。病態や治療についてはリウマチ科の頁で詳述しますが、リウマチは各病期でリハビリテーションの方法が変わります。関節は動かさなければ固くなり、骨は刺激しなければ弱くなりますので、内科的な治療と同時にリハビリで関節機能を維持することがとても大切です。進行すると頸椎のトラブルも深刻なものとなりますので、予防動作や日常生活の回避動作指導も重要なプログラムです。
変形性股関節症はリウマチや骨壊死症でも生じますが、多くは生来股関節を構成する骨盤の屋根部分、「臼蓋(きゅうがい)」の形が小さいことで体重を狭い範囲で受け止めなければならず、そうした構造的脆弱性から次第に軟骨が壊れ、痛みと動きの悪さで日常生活を大きく損なっていく疾患です。人工股関節全置換術は現代では脱臼率も低下し除痛に長けており、それほど忌避する手術ではありませんが、手術のタイミングを遅らせるためにも集約的なリハビリ介入が望まれます。大腿骨近位部骨折などの術後症例に対しても片足で立てるように積極的にリハビリメニューを組んでいきます。
整形外科のリハビリテーションは、主に運動器(動くことに関わる骨や筋肉、関節、神経などの総称)に対して行われ、病気や外傷で生じる様々な運動器の機能障害を回復し、残存した障害を克服しながら社会復帰を総合的に提供します。範囲は幅広く、例えば骨折、骨粗鬆症、変形性膝関節症、関節リウマチのような関節が悪くなった状態、頚椎や腰椎が悪くなった脊椎疾患、スポーツによる運動器の障害、さらに身体機能障害の予防・回復、フレイル、ロコモティブシンドロームなども加わります。腰痛や肩こりは、最もよくみられる頻度の高い症状です。
医師の治療方針を共有したうえで、理学療法士が身体の機能評価を行います。関節の動き(可動域)の大きさ、筋肉の柔軟性、筋力、姿勢、動作の効率、症状に悪影響のある動作の習慣などを調べ、問題を解決する方法を検討します。
実際の運動器リハビリテーションは、基本動作の回復を通して、日常生活の自立あるいは介助の軽減を図るために、患者さま一人ひとりの状態に応じて、物理療法、徒手療法、運動療法、日常生活動作練習、装具療法などを組み合わせて行います。そのために適切な実施計画を立て、定期的に治療効果を評価し、計画を見直しながら進めます。
物理療法は、温熱や寒冷、電気、水などの物理的な手段を使う治療法です。一般整形外科疾患、関節リウマチ、スポーツ障害、外傷などの幅広い症状に対して、各種治療機器を用いて実施します。温熱によって血流や筋緊張を改善することで痛みを緩和したり、電気で筋肉や神経を刺激して痛みの緩和や筋力の増強を促進したりします。水の浮力や抵抗を利用して、関節の動きを改善したり、体力や筋力の改善を図ったりすることも物理療法の一つです。
この物理療法と、理学療法士による徒手療法・運動療法を複合的に行うことで身体機能の改善に大きな効果が期待できます。
運動療法は、身体全体または一部を動かすことで、症状の軽減や身体機能の回復を促します。起きる、立つ、座るといった基本動作のトレーニングや歩行練習、関節の動きを改善する練習、筋力や体力を高めるトレーニングも運動療法です。徒手療法で改善した関節や筋肉の状態を持続させるためにも行われます。運動療法は、ご自身の自然治癒力を増進させる方法であり、とても効果的です。理学療法士は、けがや病気の状態、筋肉や関節、呼吸などの全身の状態を評価し、患者さま一人ひとりに合った運動の方法や回数を設定して進めます。
コルセットやサポーターなどを用いたリハビリテーションが装具療法です。義肢の装着も装具療法の一つです。
作業療法の「作業」とは、食事、入浴、家事や仕事、趣味活動など、人が関わる諸活動を指します。作業療法士は、身体的、精神的に障害のある方がご自身で生活できるようになるよう、これらの日常動作や仕事での動作などに焦点を当ててリハビリテーションを行います。歩行などの基本動作を扱う理学療法に対し、作業療法は日常生活動作や仕事などの社会復帰に向けた動作を扱います。
運動器リハビリテーションは、様々な整形外科疾患が対象となります。最も頻度が高い症状は肩こり・腰痛で、骨折、骨粗鬆症、関節リウマチ、変形性膝関節症、脊椎疾患、スポーツ障害など運動器の機能低下が認められる場合に行われます。
以下は、運動器リハビリテーションの対象となる主な症状と疾患です。気になる症状やお悩みがありましたら気軽にご相談ください。
主な症状 | 主な疾患 |
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首や肩が痛む | 肩こり、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、肩関節周囲炎(五十肩)、腱板断裂など |
腕が上がらない | 腱板損傷、腱板断裂、頚椎神経根麻痺など |
手のしびれ | 手根管症候群、肘部管症候群、頸椎症性脊髄症など |
足のしびれ | 腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなど |
腰が痛む | 慢性腰痛、変形性腰椎症、腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、仙腸関節障害など |
歩くと膝が痛む | 変形性膝関節症、半月板損傷、特発性大腿骨内顆骨壊死など |
体が動かしにくい | 外傷後関節拘縮、頚椎症性脊髄症、廃用性筋萎縮など |
体を動かすと痛みがはしる | 腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症など |
外傷後、関節や筋肉が動かしにくくなった | 関節拘縮、廃用性筋萎縮、複合性局所疼痛症候群など |
スポーツ活動に早く復帰したい | スポーツ障害、競技に応じたリハビリテーションを行います |
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